60社に93人天下り、受け入れ先が大型工事9割受注

 防衛施設庁発注の空調設備工事を巡る官製談合事件に絡み、談合疑惑が浮上した建設業界に対し、少なくとも60社に同庁OBら計93人が天下りしていることが、読売新聞のまとめで分かった。

 このうち15社は東京地検特捜部の捜索を受けていた。また、昨年度以降に限っても、54社が同庁発注工事を受注。特に、10億円以上の大型建設工事では、21件のうち19件を天下り企業が“独占”しており、天下りと工事受注との密接な関係が浮かび上がった。

 天下り状況は、同施設庁に在籍したことのあるOB(自衛官OBを含む)が中心の親ぼく団体「施友会」の名簿などを基に、昨年11月現在で、ゼネコン、海洋土木会社のほか、大手ゼネコンの関連会社を対象に集計した。

 OBの受け入れが最も多かったのは、「五洋建設」(東京都文京区)と「若築建設」(北九州市)、大手ゼネコン「鹿島」(港区)の関連会社などの4社で、いずれも3人を受け入れていた。「東亜建設工業」(千代田区)、「前田建設工業」(同)、「りんかい日産建設」(港区)など25社には、OB各2人が天下っていた。「鴻池組」(大阪市)など31社は各1人だった。

 東京地検特捜部は1月31日以降、大手ゼネコンなど約20社を捜索、このうち15社が施設庁OBらを受け入れていた。

 一方、捜索を受けた大手ゼネコンのうち、「大成建設」(新宿区)と「清水建設」(港区)、「大林組」(同)の3社は、直接、OBを受け入れていなかったが、関連会社や子会社に計4人が天下っていた。

 また、2004年4月から昨年12月末までの間に、全国11の防衛施設局と防衛施設支局が発注した土木・建築工事の受注状況を見ると、施設庁OBらの天下りを受け入れている60社のうち54社は、共同企業体(JV)での受注も含め、それぞれ1〜7件を請け負っていた。

 さらに、予定価格が10億円以上の大型工事に限ってみると、21件のうち19件を天下り企業がほぼ独占。このうち随意契約だった1件を除く18件で入札が行われたが、落札率(予定価格に占める落札額の割合)は、99%台が3件、98%台が5件あり、平均落札率は97・63%と高率だった。

 同庁OBらの天下りを巡っては、前技術審議官・河野(かわの)孝義容疑者(57)ら3人が逮捕された競売入札妨害容疑の対象となった3件の空調設備工事でも、落札した9社のうち4社に過去10年間で6人のOBが天下りしていたことが判明している。