説明なく上場直後に投資会社、証券会社の抗議無視

説明なく上場直後に投資会社、証券会社の抗議無視

 前社長の堀江貴文容疑者(33)らが逮捕された「ライブドア」が、2000年4月の株式上場直後、投資家らに説明していなかった投資会社を突然設立し、上場の主幹事を務めた大手証券会社から厳重な抗議を受けていたことが、関係者の話で分かった。

 同社はこの後、上場前に掲げていた本業のインターネット事業から、この投資会社を通じたM&A(企業の合併・買収)事業に軸足を移していった。同社が上場時から、法律をすり抜け、利益を上げようとする企業体質を持っていた実態が浮かんだ。

 ライブドア(当時「オン・ザ・エッヂ」)は同月6日、東証マザーズに上場。5日後、100%子会社の投資会社「キャピタリスタ」(ライブドア証券に吸収合併)を設立することや、会長に堀江容疑者、社長には後にエイチ・エス証券副社長となる野口英昭氏(1月に死亡)が就くことを発表し、翌日、設立した。

 しかし、ライブドアは上場前、東証や証券会社に提出した資料、投資家向けに上場後の経営方針などを開示した「有価証券届出書」で、今後の具体的な事業にネット関連しか挙げておらず、投資会社を作る計画を明かしていなかった。

 関係者によると、ライブドアの発表で、投資会社設立を知った主幹事の大和証券SBCM(現大和証券SMBC)は、幹部が堀江容疑者を訪ね、「上場前、投資家に説明せず、本業以外の業務に乗り出すのは問題がある」と指摘したが、堀江容疑者は「ダメなんですか」と意に介さなかったという。ライブドアは、グループ内で投資やM&Aの事業を手がけるキャピタリスタを通じ、投資家らに事前に説明していたネット事業から、企業買収などに重点を移していった。

 有価証券届出書では、上場で得る資金約55億円の使途として「子会社、関連会社の設立」を含めており、子会社として投資会社を設立したこと自体は、直ちに証券取引法などに抵触する行為とは言えない。

 だが、同証券の元幹部は「上場直後なのに、未経験で利益が上がるかどうかはっきりしない投資事業に、投資家から集めた資金を使うのは問題で、事前に知っていれば主幹事を断っていた」と批判。

 その後、同証券は上場を目指す企業に、ライブドアの社名を挙げ、「このようなことをする会社の主幹事は受けない」と説明したという。

 ライブドアは、その後も株式の極端な分割や、東証時間外取引を利用したニッポン放送株の大量取得など脱法的な手法が論議を呼び、今回の事件でも、一つ一つの行為は違法とは言えない株式交換などを組み合わせた自社株売却で、多額の利益を上げたことが判明している。

 新たに明らかになった上場前後の行為は、その原点とも言える。

 上村達男早大教授(商法、証券取引法)は「誤解を与える情報開示で、上場時から投資家が眼中になかったのではないか」と指摘。

 大手証券会社の勤務経験を持つ経済評論家の三原淳雄さんは「証券各社は法律だけでなく、エチケットも守れる会社を選んで上場させるべきだ」と話している。