村上ファンド代表逮捕 インサイダー取引認める

村上世彰容疑者(46)

 ライブドアによるニッポン放送株の大量取得を知りながら、公表前に同株を買い増したとして、東京地検特捜部は5日夕、証券取引法違反インサイダー取引)容疑で、「村上ファンド」代表の村上世彰容疑者(46)を逮捕し、証券取引等監視委員会と合同で東京・六本木ヒルズ村上ファンド事務所など約10カ所を家宅捜索した。


 特捜部は、村上容疑者が同株を高値で売り抜けるため、主導的に一連のスキーム(枠組み)を計画したと断定した。違法取引で得た利益は約30億円に上る。


 敵対的TOB(株式公開買い付け)や株主総会の委任状争奪戦(プロキシーファイト)を仕掛け、「モノ言う株主」として株式市場で注目を集めた村上容疑者。特捜部は、その錬金術の解明を進める。


 調べによると、村上容疑者は村上ファンド投資顧問会社「MACアセットマネジメント」(東京都港区)の実質経営者として、遅くとも平成16年11月8日に、ライブドア前社長の堀江貴文被告(33)=証取法違反罪で起訴=らから、5%以上のニッポン放送株を取得することを伝えられ、翌9日から公表前の17年1月26日までに計193万株を99億5000万円で買い増した疑い。


 ライブドアが2月8日に時間外取引で同株を大量取得した際に一部を売却。その後、ライブドアとフジテレビによる同株の争奪戦で株価がつり上がったのを見計らって残りの株の大半を売却し、違法取引で取得した株の売り抜けで約30億円の利益を得た。


 村上容疑者は、フジテレビが17年1月に実施したTOBの動きを察知。フジテレビとライブドアが、同株争奪戦を行えば株価がつり上がり、高値で売り抜けられると考え、時間外取引ライブドア側に指南するなど一連のスキームを考案した。


 村上容疑者は逮捕前の5日午前に記者会見し、特捜部の任意の事情聴取で容疑を認めていることを明らかにした上で、「もうけようとしたわけではないが、(ライブドアの動きを)聞いちゃった」と弁解した。


 ≪「卑劣な犯行」≫
 伊藤鉄男・東京地検次席検事の話「一般投資家の犠牲によって利得を図った卑劣な犯行。十分な捜査を行う」
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 ≪事前会見 在宅起訴狙い降伏姿勢?≫
 逮捕直前に記者会見で、自説を展開しつつ“白旗”を揚げた村上容疑者。この会見の動きは検察側も事前に想定していなかったという。検察幹部は「捜査方針を左右するものではなく、影響は受けていない」と突き放した。


 あえて降伏姿勢を世間に示した真意について検察幹部は「逮捕者をなるべく少なくするため、あわよくば自分も在宅での調べにしてもらうため、恭順の意を公に発信しようとしたのではないか」と話す。続けて「非常に頭のいいやり方で、クレバーさを感じる。証拠隠滅や逃亡の恐れがないということを示したかったのもあるだろう。ただ、会見自体は自己弁護に終始していて、とても捜査とはかみ合わない。『逮捕してくれ』と言っているようなものだった」と不快感を示した。


 白鴎大法科大学院土本武司教授(刑事法)は、「これまでの事情聴取で検察側の捜査の進展具合を探り、いずれ認めるなら国民の前で自身の姿勢を示した方が得策と判断したのだろう。理性的、合理的で計算高く、欧米流の考え方で、『生き方は自分で決める』という自己決定権に基づいた感じもする」と指摘した。


 情報誌「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏は、「検察に対する先制攻撃」とみる。


 「会見では、『プロ中のプロが過ちを犯した』という旨の発言をしていたが、公判維持は難しいとのアピールだ。ライブドア事件堀江貴文被告の公判では、検察側にとって厳しい局面も予想されているなど、さまざまな事情をふまえた結果ではないか」と話している。
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【用語解説】インサイダー取引
 会社役員らから非公表の重要事実を聞き出し、内部情報に基づき、その会社の株式を売買する行為など。証券取引法166条で禁じられている。公開買い付け(TOB)の実施を事前に聞き出し、公表前にTOBの対象となる会社の株式を購入する行為も、167条で禁止されている。TOBでなくても5%以上の株式を大量取得する場合は「TOBに準ずる行為」として規制対象となる。3年以下の懲役か300万円以下の罰金、またはその両方が科せられる。


 やはりか。村上だけは違うと思っていた人々も多いであろう。しかしながら彼本人も堀江逮捕の時期にもうこうなる事はわかっていたように思う。いや、むしろそのもっと以前からわかっていたのかもしれない。


 金だけしか見えなくなる経営哲学。全てを失わなければ目が覚めないという事であろうか。なんと醜い末路であろうか。

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